自治体が建設する「ごみ固形燃料化工場」について(理事長談)

 

                            平成26年11月

 

今、灯油等燃料代の高騰が、あらゆる分野に大きな打撃を与えています。

そうした中、札幌市役所が建設し、現在も稼働している「ごみ固形燃料化工場」が提供する固形燃料の価格は、灯油の10分の1以下でもあり、最近、俄かに札幌市の固形燃料化工場が注目を浴びています。

当研究所理事長の橋本は、平成2年稼働のこの札幌市事業系ごみ固形燃料化工場の建設計画責任者でした。

 

当北海道資源循環研究所は、現在、自治体市町村に亜臨界アミノ酸液肥化工場建設と同時に固形燃料化工場建設を働き掛けて行く方針を打ち出しています。

 

固形燃料化事業展望は下記「ごみ固形燃料化事業展望(1)(2)」の図のとおりですが、札幌市でごみ固形燃料化事業に携わってきた橋本理事長に、自治体によるごみ燃料化事業の在り方について伺いました。

                               (インタビュアー:広報担当 佐藤)

 

Q. 理事長が札幌市職員時代に計画した固形燃料化工場はどのようなものだったのですか。

 

<以下、橋本理事長>

  札幌市ごみ資源化工場の建設は、私が30歳台後半の清掃部・施設計画係長時代に計画して、リサイクル指導課長時代の平成2年に稼働を開始しました。

当時、「事業系可燃ごみの木くず・紙くず・廃プラスチック」を原料として、日量200トン処理の国内最大のごみ固形燃料化工場でした。

稼働して25年になりますが、今でも年2万トンの固形燃料が副都心地区である厚別の地域冷暖房に使用されています。

 

計画当時、上司からは「こういう施設は10年稼働が限界だよ」と言われました。

先日、改めて視察しましたが、今も安定的に稼働していることは計画者としては嬉しいし、工場の円滑な運営に力を注いできてくれた後輩達や関係者に感謝したいですね。

 

 

Q. 燃料化事業導入動機と事業化メリットはどうでしたか。

  

     当時、札幌市は増える可燃ごみ全量焼却を目指していましたが、相当数の事業系可燃ごみを埋め立て処理していました。

5清掃工場の建設計画もありました。建設費は当時で200億円でした。

施設計画係長だった私は、市の財政圧迫を回避するためにも第5清掃工場の建設を避けるため、夏の間に     

大量に排出された廃木材を、ごみが少なくなる冬に最新鋭の篠路工場に搬入する間、一時貯留する「ご

みサイロ」の建設等、減量作戦も駆使していました。

大量の事業系ごみが篠路清掃工場で焼却されるようになり、篠路清掃工場がダウンすることが度々おき

ました。

この原因が、事業系ごみの高カロリーにある事が分かりました。

それほど高いカロリーのごみならば、燃やさずに燃料にしてはどうかと考えたのが燃料化事業への直接

の動機です。

 

  市長には、「ごみ焼却には、トンあたり3万円の処理経費が掛かる。固形燃料化であれば、

  半額の5000円で済む」と説得しました。

  事業メリットは色々ありますが、一番の効果を実感したのは、この固形燃料を購入して、大通り地区の

  都心部のビルに温水を供給している北海道熱供給公社だったと思います。

  トン当たり17,000円で購入していた石炭に代えて札幌市役所の固形燃料をトン当たり2,300円と

  極めて安い値段で購入することになりましたから。

  固形燃料購入後、3年で今までの赤字経営が黒字経営に変わったと、当時の社長から感謝されましたよ。

 

 

Q. 固形燃料化工場を保有している自治体は、国内で札幌市と富良野市のみのようですね。

 

  先日、富良野市役所の固形燃料化工場を視察しました。

  富良野市の固形燃料化工場は、札幌市と同時期に建設され、毎年2,000トンを生産しています。

「国内で生ごみを入れずに固形燃料を製造している自治体は、富良野市と札幌市だけだ」と富良野市課長から聞いて正直驚きました。

 

札幌市ごみ固形燃料化工場稼働当時、燃料化工場へのリサイクルツア-の企画があったくらい、全国から自治体職員や民間企業の方など多くの視察者が集まりました。

当時の札幌市長も、「札幌市が環境政策のリーダーとして全国を引っ張っていきたい!」と、私の計画案を認可してくれ、また国内有数のプラントメーカーが工場建設を請け負っていたので、全国に札幌市方式のごみ固形燃料化工場が普及するのは、時間の問題だと考えていたからです。

 

しかし、そうはなっていなかった。

今後の自治体資源化事業普及の事もあり、今、その原因を自治体体制との関係で考察分析しているところです。

  

  

Q. 固形燃料化事業を成功させるために重要なことは、どのようなことでしょうか。

 

  まずは燃料品質確保を最大限重要視することです。

燃料使用者側の意向に沿った製品づくりが重要です。

  特に、塩素分の除去が重要で、生ごみ・塩化ビニールの排除が大切です。

 

  富良野市役所燃料化工場に手選別ラインを設けて塩化ビニールや異物を除去していことは、

  私としては、とても感動しました。

  札幌市と富良野市が、25年間に渡り固形燃料化工場を稼働できている秘訣はここにあります。

 

  10年前、ごみ固形燃料を使用している三重県の発電所で、燃料由来のガス爆発により死亡者2名を出したことがあります。

  原料に生ごみを使用していることが原因でした。

  生ごみ由来の腐敗ガスが発生したため起きてしまった、重大な事故です。

当時、国が一斉に国内の固形燃料化工場に立ち入りし、札幌市のごみ固形燃料化工場監察も報道されていました。

ガス発生が無いようにと札幌市ごみ固形燃料化工場には生ごみを排除してきたので、「札幌市は慌てる必要はない!」と関係者に話した記憶があります。

 

しかし、それなのに、その後も、国内の自治体等が、生ごみを含めたごみを原料として固形燃料化工場を建設しているのは、到底理解できない事です。

 

 

Q.  北海道内でも、燃料化事業の失敗例はありますか。

 

  固形燃料事業を中止した例が、道内にもあります。   

     

      報道にも出ているので、知っていると思いますが、名前を出して申し訳ないが、代表例として胆振管内の  

      白老町の固形燃料化事業を上げることができます。  

      白老町は、「町民に分別の手間を掛けなくて済む!」との理由で高温高圧処理方式を用いた「生ごみを含

      めた可燃ごみ燃料化事業」を平成21年頃に導入したそうです。

  しかし、現在、同燃料化工場は稼働を中止しています。

 

現在、白老町は、固形燃料化工場を建設する以前の状況に戻り、生ごみを含む可燃ごみを隣の登別市の

清掃工場に搬入し、焼却しています。

このことは、資源化を進める人々や、白老町町民としても大変残念な事でしょう。

白老町燃料化工場建設には、農水省の建設補助金が入っています。

現在、工場全体の稼働が止まっていますので、このままでは建設補助金を国に返済しなければならない

ことになり、町財政・町住民にも深刻な打撃を与えることになります。

 

 

Q. 白老町のごみ燃料失敗の原因は何だと思われますか。

 

  燃料化の中止原因は、燃料中の塩素含有量の多さによります。

先にお話した白老町の高温高圧による燃料化方式は、確かに生ごみ由来の腐敗を、一時的に抑えることはできますが、生ごみ、塩化ビニール由来の塩素問題は解決しません。

 

  今から5年ほど前、白老町固形燃料化工場に高温高圧処理器を納入している札幌の企業から、「白老町製造の固形燃料が、塩素分が多いとの理由で製紙会社から固形燃料の受け入れを拒絶されている。何か解決策は無いか?」と相談を受けました。

  先ほど申し上げたとおり、生ごみを原料にすれば、塩素問題は当たり前のことです。

 

  当時、北海道資源循環研究所が解決策として示したのが、「生ごみを燃料化の対象にしないで、高温高圧  による肥料化」にすることでした。

今、国内自治体市町村に普及活動を開始している亜臨界肥料化です。

 

 

Q. 生ごみも対象にする白老町方式による燃料化を採用している自治体は、他にもあるのでしょうか。

 

  ありました。

 

白老町に続き、道内の美唄市と月形町が、白老町方式の固形燃料化工場建設計画を市議会に提出、承認され、建設に向かっていました。

しかし、白老町の現状を踏まえ、当北海道資源循環研究所が両自治体に伺い、白老町方式の燃料化困難性を指摘、再検討をアドバイスさせていただきました。

 

当時、「白老町方式を採用するのは、市民に分別の負担をせずに済むからだ」と月形町幹部の方はおっしゃいました。

「190万都市の札幌市民が分別を行っているのに、人口の少ない美唄市、月形町が分別出来ないのは、可笑しいではないですか!」と、うちの職員が町幹部に詰め寄ったことは、よく記憶しています。

 

美唄市が、白老町方式の導入を市議会で決定していたにも関わらず、当方の意見を取り入れ燃料化を撤回したことは、賢明だったと思います。

 

美唄市に白老町方式の燃料化撤回と生ごみの肥料化を助言に伺った際、市の対応ぶりを見て、北海道新聞の記者に「美唄市は燃料化を撤回するから、取材してみては?」と、話しました。

その時、記者は半信半疑でしたが、取材後「橋本さんの言った通りだった!!」と興奮気味に電話をしてきたのは、平成23年のことでした。

 

  数日後に、「美唄市が燃料化工場撤回!」記事が載りました。

 

 

Q. 市民分別を要さない燃料化、資源化はあるのでしょうか。

 

  1980年代、「スターダスト80」という国のプロジエクトがありました。

 

  市民分別に寄らず機械分別を打ち出したものですが、失敗に終わり、本当に「星くずとなって消滅し 

  た!」と揶揄されていました。

 

  自治体職員は誤解しています。

 

  市民も環境問題解決のためには、「市民の5本指での分別」を厭いません。

環境問題に詳しい議員でも、老人の事を考えると白老町方式が良いという議員がいます。

  そのような世帯のためには、大都市札幌も特別に対応を考えています。

  自分達が出すごみです。

  役所に任せきりにせず、皆で知恵を出して解決すべきです。

 

確かに、札幌市役所の清掃部新米係長の時、先輩課長からは「市民に手間を掛けさせないで、機械的に分別する手法を考えだすのが技術屋の使命だ」と言われました。

「スターダスト80」もそうだったのでしょう。

 

  当時の清掃部長に相談すると、清掃部長は、黙って5本の指を出しました。

  「手に優る分別機械は、ない」という意図でした。

  白老町は、その技術に頼りすぎたのではないでしょうか?

 

 

Q. 白老町は、今後、どうしたらいいのでしょうか。

  北海道資源循環研究所は、過去の経緯もあり、白老町への支援をしていく必要があるのではないかと思いますが、どうですか?

 

白老町の燃料化工場の在り方は、町当局だけでなく、町議員、町民も参加して真剣に議論して決めて

行くべきです。

 

先ほど、平成21年に、白老町に燃料化のための高温高圧装置を納入している企業から、白老町の燃料化の在り方を相談された事をお話しました。

 

 相談への北海道資源循環研究所の回答は以下の通りでした。

 

「今、固形燃料化工場へ搬入している可燃ごみについて、町民に分別を要請する。

分別された生ごみを、3基の高温高圧器のうち1基で「肥料化(亜臨界アミノ酸液肥化)」し、残りの2基で「紙屑・廃プラを燃料化」したらどうか。」

 

提案だけでは無責任と考え、札幌の企業からの資金協力と道庁の補助金を活用し、白老町環境センターにある亜臨界水装置にて「生ごみ等の亜臨界アミノ酸液肥化」等の実験を行いました。

 

現在、自治体市町村に家庭生ごみ、下水道汚泥、水産加工副産物等の亜臨界アミノ酸液肥化事業を勧めていますが、これは、白老町の燃料化事業の失敗の上に立っています。

 

白老町には、単にこのまま燃料化失敗で終わらず、この失敗を教訓に次の方向性に向かってほしいと願っています。

亜臨界界肥料化もその一つだと思います。

 

 

Q. 白老町の町民の方々に町のリサイクル事業について共に議論いただく場が必要ですね。

 

白老町からは、この3月、燃料化工場休止にあたって、「補助金を交付している農水省との協議にあたり、工場再開に当たっては、亜臨界肥料化事業も1つの検討案として農水省へ提示したいので、協力してほしい」との連絡が当北海道資源循環研究所にありました。

 

現在、北海道資源循環研究所は、北海道亜臨界肥料流通機構と共催で、国内、道内各地で「自治体市町村が、地域のごみを燃やさないで、亜臨界肥料化及び固形燃料化等資源リサイクルを行おう!!」とのセミナーを開催しています。

既に、5回を重ねています。

地域の議員、農家にも案内を出しています。

来月以降、帯広、岩見沢でも計画があります。

 

白老町は、他の自治体と違い、既に亜臨界肥料を製造できる高温高圧装置を有していますので、亜臨界肥料化導入は随分有利な地位にあります。

こうした情報を、町当局ばかりでなく、町議員、町民にも知らせておく必要があると考えています。

白老町での亜臨界肥料化セミナーもできるだけ早く企画したいと考えています。

 

北海道資源循環研究所、北海道亜臨界肥料流通機構の提案も議論の一つとして、白老町の皆さんで考えてほしいと思います。

 

最後は、白老町の皆さんが決める事です。

 

 

Q, そうですね。国内でも珍しい高温高圧処理機(亜臨界水処理機)を保有している白老

  町には、何か活路を見出してほしいですね。

  他にもこの高温高圧処理機(亜臨界水処理機)を活用している自治体等は、北海道に

  あるのでしょうか?

  

  北海道は、高温高圧(亜臨界水処理)方式の先進地です。

  農水省が、早々と道内に導入し、先達となっていただきました。

  自治体に先駆けて国が亜臨界水方式を導入されたことを知り、驚きました。

  公務員出身の私には、感動でした。

  亜臨界資源化を目指す自治体市町村には、是非この施設の見学を勧めたいですね。

  当北海道資源循環研究所も、遅ればせながら亜臨界水方式によるアミノ酸液肥システムを開発し、

  現在、亜臨界アミノ酸液肥を製造販売しています。

 

  近く、液肥メーカーも道内で亜臨界アミノ酸液肥製造を計画しているので、北海道は名実とも

  国内の亜臨界資源化のリーダーの位置を占めて行くと思います。

 

  自治体では、現在、網走管内の斜里町が、白老町と違い「生ごみを外した可燃ごみを白老町方式の

  高温高圧処理機(亜臨界水処理機)で燃料化」していますね。

 

 

Q, 斜里町の燃料化工場は、視察されましたか。

 

  視察させていただきました。

  斜里町の燃料化は、視察前は生ごみが入っていないのであればこれはこれで良いかと考えていましたが、  昨年視察させていただいた際、ボイラーなどの燃焼で苦労して

  いるとのお話がありました。

  保管ごみ原料の状態は、種々雑多でした。これが原因かと思います。

  燃料化を継続するのであれば、富良野市を参考に、「良い原料」の確保に努めたらよいと思います。

 

白老町も斜里町も高温高圧方式を導入したが、この技術はアミノ酸等の有効物質を抽出回収する技術です。

  斜里町は生ごみを「微生物による堆肥化工場で堆肥にしている」が、極めて安い値段でしか農家が利用してくれません。

 

  斜里町は知床半島の付け根にあり、水産業も農業も盛んです。

  地元の水産廃棄物を斜里町の今ある高温高圧処理器(亜臨界水装置)で亜臨界アミノ酸液肥に転換し、  高価格で流通しているアミノ酸液肥を現状よりも安く農家に提供し、地域内で健全に循環してもらえたら  いいのに!」というのが、昨年視察した際の率直な感想でした。

  

  私は、亜臨界燃料化のように灯油を使い高温高圧状態下にしてまで燃料を作るメリットは無いと考えてい  ます。燃料として燃やす物を、その前に燃料を使い、わざわざ分解しても致し方無いと思うからです。

  

  富良野市のように、シンプルに考えた方が良いと思うのです。

 

 

Q, 富良野市の固形燃料化事業は、札幌市とは違うとの事ですが。

 

  富良野市民が、市の政策の中で一番支持している政策と誇りは「リサイクル事業」と言うことです。   

      これは、素晴らしいことです。

市民がこのように富良野市の「リサイクル事業」に誇りを持っている限り、

市長が代わってもリサイクル政策の変更は無いでしょう。

 

全国で「ごみリサイクル」等の先進都市と言われる自治体の場合、必ず「ごみ市長」と言われた、ごみ問題解決に強いリーダーシップを発揮した首長がいます。

富良野市にもそのような名市長がいたかどうかは確認していませんが、リサイクル都市を築きあげた富良野市民も素晴らしいと思います。

 

最近、富良野市役所は、新たに「リサイクル」と「農業」の提携を打ち出しています。

富良野市製造の「ごみ固形燃料」を「農家のビニールハウス用燃料」に提供していきたいとの考えかも

しれません。

当北海道資源循環研究所のテーマでもあります。

 

現在、富良野市のごみ固形燃料は、人口が少ないこともあり、家庭ごみを原料として

いますので、事業系ごみを原料とする札幌市と違い、どうしても塩素分が多くなると

いう課題を抱え苦労されています。

 

しかし、富良野市民、富良野市役所のスタッフがその壁をきっと乗り越えていくもの

と考えています。

「北の国から」の舞台に住む皆さん方ですから。

 

 

Q, 最後に、自治体で資源化事業を行った経験者として、資源化を行う自治体への助言が有りましたら、お願いします。

 

自治体職員は、ごみ問題についてきちんと住民に情報を開示し、住民、議会とよく相談すべきです。

住民も役所任せにせずに、地球環境問題解決の身近な「ごみ」について、まず、考え行動してほしい。

  ごみ問題は、一番身近な住民自治問題でもありますので。

 

 

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